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とある風紀委員の観察日記

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 〇月 一日 月曜日 晴れ

 登校時間になってもなかなか目を覚ましてくださらないお姉様を起こして差し上げようとしたのですが、相変わらずの愛くるしい寝顔に、思わず見とれてしまい危うく時間を忘れそうになりましたわ。
 週明け初日からのドタバタした朝に、少しだけ気が滅入りましたが……慌てて着替えをするお姉様が何だが微笑ましかったので、まあ良かったのかしら?


 〇月 二日 火曜日 晴れ

 今日は二人とも時間に余裕を持って登校する事ができました。
 道行きにお姉様と交わす何気ない会話の一つ一つが、わたくしが今日という一日を過ごす為の何よりの活力となるんですの。
 補充された元気を前面に出して張り切ってみせたわたくしに、お姉様は「黒子はいつも元気ねぇ」なんてちょっと呆れたご様子でした。
 んもぅ、わたくしのテンションはいつだってお姉様のせいで上下しているんですのよ。
 これも単にお姉様が魅力的過ぎるからいけないんですわ。全く、罪作りなお人ですこと。


  〇月 三日 水曜日 晴れ

 昼休みにお姉様と出会いました。
 お姉様はわたくしを昼食に誘ってくださったのですが……残念な事にこの昼休みには風紀委員の会議が予定されていましたの。
 二つを天秤に掛けて迷っている最中に「都合が悪い?」と、お姉様に問われて───わたくしはついうっかりその事を洩らしてしまったのです! 
 「それなら仕方が無いわね。黒子、お勤め頑張りなさい」と、お姉様に労いの言葉を掛けられてしまっては、もう会議の方に参加するしか選択肢はありませんでしたの……。
 颯爽と去り行くお姉様の背中に抱きついていきたい衝動を必死に押し殺して振り返りながら───わたくしは己の不運を思いっきり呪ってやりたくなりましたわ。


  〇月 四日 木曜日 曇り

 放課後、風紀委員の仕事の一つであるパトロールに出たわたくし。
 何故だかいつものようにお姉様も一緒。お姉様と共に時を過ごせるのは嬉しい事ですが、正直、パトロールにはついてこないで欲しいんですの。
 風紀委員であるわたくしとしては、一般人のお姉様を巻き込みたくはないですし(これを言うといつもお姉様はむすっとしてしまいますが)、勿論わたくし自身の思いとしましても、お姉様には危ない目にあって欲しくはない───
 しかし、お姉様は持ち前の世話焼きな性分から、こういう厄介事にはよく首を突っ込んできますの。
 それどころか少々……いえ、かなり勝ち気なところも持ち合わせていらっしゃるので、むしろ積極的に、事件に関わろうとしてくるのです……。
 今日のパトロールも例によって、その目的が昨日の風紀委員の会議で話題にあがった、最近わたくし達の学区内を縄張りにしている不良達への警邏だと知ったお姉様は、
 もはや当たり前と言わんばかりにわたくしに同行してきたのでした。
 結局、好戦的な笑みを浮かべるお姉様を宥めつつ見て回ったパトロールは何事の問題もなく、無事に終える事が出来ました。
 「明日のパトロールでは犯人どもを見つけてやるわよ!」と、気を吐くお姉様は頼もしくもありましたが、やはりどこか不安なので……明日以降のパトロールには関らせないようにしたいと思いますの。
 放課後は速やかに学校を出なければいけないですわね。